2014/12/19

Excel ユーザーのための Power Query

Excel 2007 以降、機能強化面で明らかに重点施策となっているのが「外部データの取り込み」である。[データ] タブの [外部データの取り込み] により、さまざまなデータソースからデータを取り込むことが可能になった。


しかし、マイクロソフトの SQL Server を導入していなければそれほど気にする Excel ユーザーはいないと思われる。使うとしても Access データベースが多かったのではないだろうか。(Web クエリも使えそうに思うのだが、それほど活用できるシーンは多くないのが実状だろう)

クラウド サービスが台頭するに従い、参照するデータが社内のサーバー(これを最近はクラウドと対比して オンプレミス と呼ぶ)だけではなくなり、また、そのデータ接続の形態も多様になってきた。

そのような流れのなかで Power Query と呼ばれる Excel アドオンがマイクロソフトのダウンロードセンターから無料で利用可能になった。注意点としては、システム要件で Excel のエディションは Professional Plus, 365 Pro Plus の企業向けエディションに限られ、Home and Business / Solo などの個人向け Excel にはインストールすることはできない。また、インストールできたとしても、Professional Plus, Pro Plus 以外ではネット上に公開されているデータのみ参照といった制限が加えられる。

この Power Query は PowerPivot を含む Power BI と呼ばれるサービスブランドの主力製品の1つであり、これまでリボンの [データ] タブにあった [外部データの取り込み] を完全に置き換えるものである。

ところが、このブログの Office 365 SharePoint リストとの連携などで、Power Query を一度も使っていない。 Power Query を使わなくても SharePoint リストをテーブルとして Excel に取り込むことはできる。現在のところ、このあたりの機能は「移行期」であり、同様の結果をもたらす機能がいくつかあるが、明らかにマイクロソフトは Power BI を軸にして、Excel をデータ分析のツールとし、クラウドでも重要なポジションとなるように拡張している。

では、クラウド以外では Power Query は使えないのか?というとそうではない。
あえて今回の投稿のタイトルを「Excel ユーザーのための」としたのは、クラウドを使っていない環境でも Power Query の活用シーンが多いからである。

CSV データの取り込み

従来の 「テキスト ファイル ウィザード」(データ タブのテキスト ファイル)を使って CSV データを Excel に取り込んでいるユーザーも多いだろう。CSV データ ファイルはマイクロソフトが Excel に関連付けしているためダブルクリックでも取り込むことができるが、鉄板ネタの「001 が 1 になる」「1-1 が1月1日になる」といったユーザーが期待しない変換をする。このため、このウィザードは必須であった。


Power Query の CSV 取り込みでは、上記のウィザードでできることはもちろん、様々な強化がされている。

取り込み条件を設定するクエリ エディターのホーム画面

Power Query は単純にデータを取り込むだけでない。取り込む「列」の指定や列の順番の変更を[ホーム] タブの [列の管理] で指定できる。取り込む行数の削減や並べ替え、さらには列内の文字を置換したり、区切り文字を指定して列の分割も可能だ。また、[カスタム列の追加] も可能で、その列には数式により、他の列を参照したり、Power Query 関数を使って計算が可能だ。

以前 PowerPivot で紹介した DAX 関数とは表記方法が違う。PowerPivot の DAX 関数は Excel のワークシート関数に非常に近かったが、Power Query 関数はワークシート関数とは表記法が違うので戸惑うこともあるだろう。しかし、このようにデータ取り込み時に計算までしてしまえば、取り込んだあとのワークシートがシンプルになるのはメリットと言える。

Excel データの取り込み

さらに、ローカル PC やファイルサーバー上にある Excel ブックからデータを取り出すこともできる。それも、そのブックを Excel で開くことなしに取り込むことができるのだ。

また、ブックに複数のワークシート、そしてテーブルがある場合は、それらを判断してナビゲーション ウィンドウで選択することができる。


取り込みたいデータを選択すれば、上述の CSV で行った加工が同様に可能である。
しかし、これだけだと Power Query を使って Excel のデータを取り込むメリットが実務面ではわからないだろう。

Power Query は「クエリ」という単位で取り込む条件を記憶する。データ取り込み先の情報にはじまり、クエリ エディタで設定した条件などを保持することができる。

そのクエリを使って、さらにデータの加工が可能なのだが、特筆すべきはクエリによる結果データ(テーブル)の「追加」と「マージ」ができることだろう。


クエリによるデータ(テーブル)の追加 (Append)

実務では同じ列の表(データ)を追加するという業務も少なくない。
そのような場合、手作業で範囲をコピーして、コピー先にペーストするか、自動化するために VBA を使うなどが考えらえる。

このデータ追加の作業も Power Query を使うことで可能だ。

蓄積している表(またはテーブル)を取り込むクエリと、追加するデータを含む表(またはテーブル)を取り込むクエリを作成し、双方のクエリを「追加」結合させることで、双方のテーブルを結合した新しいテーブルを作ることができる。データベースの世界ではユニオンと呼ばれる機能である。

たとえば、過去のデータは Excel のブックのワークシートに保存されており、今期のデータは CSV や Excel ワークシートとして更新されているようなケースでは、過去のデータのクエリと、現在進行中のデータのクエリを「追加」結合させることができる。もし、列順が違う、今期から列名に修正が入った、、、などの事態が発生した場合は、クエリ エディターを使って追加結合できるように修正すればよい。

そして、この方法の最大のメリットは、一度作ってしまえば、そのクエリは再利用が可能なことである。もちろん、実務では参照先のファイル名が変わるケースもあるだろうが、もし、上書きでファイルが更新されるような場合は「データ更新」するだけで最新のデータを参照して結合することができるのだ。

結合できるクエリの数には上限はない。(扱うデータによってメモリの上限はあるはずだが。)
2つのクエリを結合するクエリは既定で「Append1」のような名前のクエリになる。さらに結合させたいクエリがあれば、この Append1 にそのクエリを使って追加結合させる。これを繰り返すことで3つ以上のクエリを結合させることができる。

CustmerList クエリと CustmerList1 クエリを追加結合する Append1 クエリ

クエリによるデータのマージ

かたや、マージは Excel 2013 以降に追加されたリレーションシップ、もしくは PowerPivot のリレーションと同じことができる。


さらに、PowerPivot で行った RELATED 関数を使わずに参照先の欲しい列を挿入することができる。


一般的には一度ワークシートに取り込んでから加工をするのがわかりやすいが、件数が多いときなどは、上記の追加結合やマージ結合を含むデータの加工処理のためのクエリ作成で、ワークシートに参照先の全データを取り込む必要がない。

表・テーブルの読み込み先の指定の「データを表示する方法」で「接続の作成のみ」を選択して、クエリを作ることで、全データを読み込むこと無しに、そのクエリを使って加工、追加結合、マージ結合が可能になり、そのクエリ結果だけをワークシートに書き出すことが可能だ。


そして、この操作をする上で PowerPivot のように「データモデル」に追加する必要がないのも、Excel のピボットテーブル ユーザーにとってはうれしいことだろう。

「機能」への拡張

Excel は「機能」、「関数」、「VBA」の3要素から成り立っている、というのは実践ワークシート協会 代表理事 田中 亨の主張であるが、その中でもとりわけ最近のマイクロソフトは「機能」面における拡張を推し進めている。確かに、新しいバージョンの Excel でできることは昔の Excel とそれほど差がないかもしれない。上述のようなデータの操作も、もし、VBA に精通しているユーザーが多くいれば、わざわざ新機能を使って同じことをする必要はない。

しかし、現実は、そのように VBA を使いこなせるユーザーが多いわけではない。ワークシート関数はブックのメンテナンスという観点からみると VBA 以上にやっかいなものであることを多くのユーザーが気づいていない。複雑なワークシート関数を使ったブックにはコード(数式)の一覧性がなく、そのワークシートを作った本人ですらメンテナンスができるかどうかあやしいのだ。

その状況を顧みれば、いままで VBA でやっていたこと、複雑なワークシート関数を駆使して実施していたことを「機能」だけで実現できるのは「組織にとって」大きなメリットであり、マイクロソフトはそちらのほうに向かってユーザーの利便性を高めようとしている。

そう理解して新機能、新バージョンと接することが、本当の意味で業務の効率化や、効果的な Office の活用ができると考えている。

OneDrive/SharePoint ドキュメント ライブラリーは使えない

[追記:2015年6月版 2.23.4035.242 で HTTPS 経由でのアクセスが可能になりました]

と、いつものパターンの落とし穴だが、最後にできないことを紹介しておく。

Power Query でローカルPCや LAN 上のファイルサーバーにある Excel ブックからデータを取りだすことを紹介したが、残念ながら現在の Power Query のバージョン(2014年11月版 2.17.3850.242)では https 経由で OneDrive、OneDrive for Business、さらに SharePoint のドキュメント ライブラリーにある Excel ブックからデータを取り出すことができない。

ただ、同期ツールを使ってローカル PC のエクスプローラーにある OneDrive / OneDrive for Business フォルダーから Excel ブックを利用することは可能だ。現在、OneDrive は無制限になっているのでオフライン同期するフォルダー選択には注意が必要だ。

Power Query そのものは2~3か月に1度に更新されるような頻度であり、どんどん機能拡張・追加されてきた。OneDrive や SharePoint ドキュメント ライブラリー内の Excel ブックにアクセスできる機能拡張の早急な実装を期待したいところだ。これが可能になると Excel 中心で実務を動かすユーザーにとってはさらに Office 365 の利用シーンが広がるだろう。


[参照]

(英語) Power Query formula categories (Power Query で利用できる関数一覧)
https://support.office.com/en-us/article/Power-Query-formula-categories-125024ec-873c-47b9-bdfd-b437f8716819

Office Online - Microsoft Power Query の概要
https://support.office.com/ja-jp/article/Microsoft-Power-Query-for-Excel-%E3%81%AE%E6%A6%82%E8%A6%81-6e92e2f4-2079-4e1f-bad5-89f6269cd605

2014/12/16

入力としての Excel アンケート

Excel ユーザーが「入力・計算・出力」の考え方で Excel や Office 365 のサービス/仕組みを適所適材で使うことが Office 365 の活用の早道である。

Excel Services が出力Office 365 SharePoint リストが入力で活用できることはすでに述べたが、もうひとつ Excel ユーザーとしてぜひ知っておきたいクラウド機能がある。

それが、Excel アンケート機能だ。

Excel アンケートとは

実は Excel アンケート機能は Office 365 だけの機能ではない。マイクロソフトがコンシューマー向けに提供している OneDrive でも Excel アンケートを利用できる。

OneDrive の Excel アンケート

企業向けの Office 365 OneDrive for Business さらには外部共有を許可した SharePoint Online のドキュメント ライブラリーでも Excel アンケートを作成することができる。外部共有を許可していないサイト コレクションのドキュメント ライブラリーでは作成からメニュー表示されないので注意していただきたい。

SharePoint ドキュメント ライブラリーの Excel アンケート

この Excel アンケートは、アンケートをお願いしたいユーザーに Excel を送るようなものではない。
アンケートを作成すると、そのアンケートは Web ページとなる。Excel アンケートの URL を受け取ったユーザーが Web を通してアンケートに答えると、その結果が OneDrive や SharePoint ドキュメント ライブラリーの Excel に入力される、というものだ。

アンケートを作成するのはいたって簡単だ。Web ページを作るといった感覚は全くない。

アンケートを作成する

OneDrive でも SharePoint Online ドキュメント ライブラリーでも Excel アンケートの作成方法は一緒だ。Excel アンケートを選ぶと「アンケートの編集」画面が表示される。「タイトル」や「説明」の入力欄がある。


さらに質問項目のエリアをクリックすると質問設定入力のエリアが表示される。


回答のタイプとして7種類用意されている。「段落の内容」はわかりづらい表現だが、「テキスト」が一行テキストであり、「段落の内容」は複数行テキストボックスである。

数値タイプでは書式が選択可能だ。「通貨」は自動的に日本の場合は円(\)が設定される。

選択肢タイプでは選択項目を入力・設定することが可能だ。

こうやってアンケートを完成させると、質問が列名の Excel ワークシートができあがる。


アンケートを共有する

作成されたワークシートのリボンのテーブルのセクションに「アンケート」がある。▼ を押して「アンケートの共有」を選択する。

アンケートの共有ダイアログに URL が表示される。これをコピーしてアンケート対象者に送る。SharePoint Online の場合は、URL がかなり長いので URL 短縮サービスを使うことをお勧めする。コンシューマー向けの OneDrive には共有リンク作成の際に URL 短縮機能がついている。


URL を開くと以下のような Web ページが表示される。


このアンケートの各質問項目に答えて [送信] をユーザーが押すと、その内容が Excel に反映されるのだ。

一度作ったアンケートの修正も可能だ。また、アンケートの URL を無効にすることもできる。

注意点はまだ微妙な実装があるところだろう。致命的ではないが、たとえば、[Yes/No] はアンケートでは [はい/いいえ] になるが、入力される値は既定値のままだと英語で、ドロップダウンリストから選択すると日本語になったり(この対応は選択肢タイプで「はい/いいえ」を作ればよい)、数値で書式をパーセンテージにして 10 と入れると 1000% になる。 0.1 といれれば 10% といったものだ。日付の入力などはYYYY/MM/DD を入力させるよりは日付ピッカーが欲しいところだ。このあたりは実際に試して確認することをお勧めする。

ピボットテーブルで計算、Excel Services で出力

このアンケート機能によって入力部分におけるメリットはすぐに理解できるだろう。アンケート結果は自動的に Excel に入力されるが、本質は「集計」である。この集計をピボットテーブルで行うことを前提として質問項目を設定するのがポイントだ。(フリーでなるべく入力させずに、選択肢から選択させることでデータを集計しやすくする、など)もちろん、アンケート結果は「テーブル」形式であり、ピボットテーブルは元データの範囲を指定しなおすことなくデータの増減に対応する。さらにピボットテーブルからグラフを作成し、ダッシュボード的なシートを作って Excel Services で表示することで、即時に結果を確認することが可能になる。(ただし、現状(2014/12)確認している限りでは Excel Services からのピボットデータ更新は不安定なときがある。(更新されない)ローカルの Excel で開いてピボットの更新、保存で対応する必要がある。)

まだ安定しているとは言えないが、今後のクラウドにおける Excel の方向性と可能性を感じることができるサービスであることは間違いない。コンシューマー向けの OneDrive でも利用可能なので、是非体験してほしい。

残念ながらできないこと

Excel アンケートは匿名アクセスを許可しているようなものなので「だれが」入力したかをシステム的に知ることはできない。そのため名前や ID などをアンケートの質問項目として自己入力してもらう必要がある。

さらに、「いつ入力したか」を知る術も現在のところない。Excel には TODAY() や NOW() などの関数があるが、アンケートからは関数を既定値として入力することができず、また、Excel ユーザーであれば気づくと思うが、この関数を使ってしまうと「常に再計算」される可能性があり、入力時点の日付や時間ではないことに気が付くだろう。

これらを解決したいのであれば、SharePoint の外部ユーザー招待を使って SharePoint リストでアンケートを実施するしかない。しかし、そうなると匿名アクセスはできず(だれが、を知るには当たり前だが)、必ずマイクロソフト アカウントもしくは Office 365 の組織アカウントでサインインしてもらう必要が出てくる。Office 365 ユーザー同志であれば問題ないが、一般ユーザーがアカウントの使い分けを熟知しているケースは少ないため、実際問題としては広く活用することはないだろう。

[参照] SharePoint Online 環境の外部共有を管理する
https://support.office.com/ja-jp/article/SharePoint-Online-%E7%92%B0%E5%A2%83%E3%81%AE%E5%A4%96%E9%83%A8%E5%85%B1%E6%9C%89%E3%82%92%E7%AE%A1%E7%90%86%E3%81%99%E3%82%8B-c8a462eb-0723-4b0b-8d0a-70feafe4be85

2014/12/12

Excel で入力・計算・出力をイメージする ~ Office 365 との付き合い方

Excel ユーザーであれば、Office 365 とうまく付き合うことができる、という話である。

Excel を中心に位置付けてクラウド、Office 365をどのように活用できるか、という話題になるわけだが、これまで「テーブル」機能や「データ モデル」によるデータ接続先としての「SharePoint リスト」、さらにデータを効率的に操作するツールである「PowerPivot」を紹介してきた。

エクセル方眼紙がクラウド導入の邪魔をする

しかし、そもそも実務で使っている Excel ブック、ワークシートが「エクセル方眼紙」ばかりだと、Office 365 や SharePoint は単純な「ファイル共有サーバー」か OneDrive for Business による「ファイルの退避先、バックアップ先」という使い道しかないだろう。

一般社団法人実践ワークシート協会 代表理事の田中亨 (OfficeTANAKAサイトの管理者といったほうが知っている人が多いだろう)が提唱している Excel ブック活用のための考え方 ~ Excel 活用のための5つの原則 ~ の中に「入力・計算・出力」がある。

Excel 活用のための 5つの原則 (実践ワークシート協会サイトより)
http://www.pwa.or.jp/%E4%B8%8A%E9%81%94%E3%81%AE%E3%81%9F%E3%82%81%E3%81%AE5%E3%81%A4%E3%81%AE%E5%8E%9F%E5%89%87/

Excel にデータを入力する、入力されたデータを処理・計算する、処理・計算した結果をレポートや印刷として出力する、その「役割」や「フェーズ」をワークシート作成の際に「入力・計算・出力」として意識せよ、ということだ。

エクセル方眼紙は、この役割が入れ子になっている。まず最初に「出力用の表」を作成し、そこに計算・処理のためのワークシート関数を入れ、そのワークシートにデータを入力させ、その結果を印刷する、もしくは回収する、といった具合だ。エクセルブックで配られる「申請書」や「登録届」的なワークシートを目にすることは多いはずだ。

マイクロソフトがオンラインで提供しているテンプレートから作成
はじめから印刷をし、押印をして提出するようなものは Excel の印刷機能のメリットを十分に享受できるが、ブックで返信するような申請書などは、いったい回収した後でどう「集計」やデータの「再利用」をするのだろう。
選択肢などで図形の○を使っているものなどは、人間は目視で何を選択したか判断できるが、Excel は判断できない。(これをマクロで判断したい、などという無理・無駄・無茶な話も実際ある)

最悪なのは Excel 初級や入門コースなどで例題として出される「クロス集計表」だ。

よくある手で作成するクロス集計表
そのセルに入力するデータはいったいどこからもってきたのか?(このセルにデータを入力するために電卓を使っているユーザーを何人も目撃している)元のデータが変わったら、項目が増えたら、そのクロス集計表はどう直すのか。そもそも何故クロス集計のために用意されている最強機能である Pivot テーブルを教えないのか。事実、Pivot テーブルは「上級者編」として扱われることが多いが、ビジネスの現場にいる Excel ユーザーはクロス集計を使う場面が多いはずである。ワークシート関数などを覚える前に Pivot テーブルを覚えた方がはるかに効果的であると感じる人も多いだろう。このようなクロス集計表を手で作ってしまうと、そのワークシートに入力されたデータも、そのワークシート自体も「再利用」されないのは明白だ。

なぜこのような表を作ってしまうのか。その理由はワークシート作成時に「入力・計算・出力」を意識していないからである。また、意識せよと誰からも教わっていないからである。

クロス集計表が Excel 入門コースで使われる理由は「分析に便利なクロス集計」を教えることではない。罫線の引き方、SUM・SUBTOTAL関数の使い方、グラフの作り方、場合によっては実務で使い道が少ないアウトラインの使い方などを解説するためだけだ。さらに、入力・計算・出力の考え方からすれば、この表は手作業で作ってはいけない表なのだ。

入力・計算・出力から Office 365 の役割が明確になる

Office 365 特に SharePoint は「何でもできる魔法の箱」のような紹介をされるが、Exchange Online(メール)や Lync Online(メッセンジャー)に比べると、何をしてよいかがわかりづらいサービスである。しかし、Excel ユーザーからすると、この SharePoint Online こそ、Excel ユーザーが長年感じていた課題を解決してくれる場面が多い。

その課題とは「入力」である。

前提となるのは今扱っている表やテーブルが「1行1データの原則」に基づいて設計がされていることだ。

それができていれば SharePoint リストを入力で使えば以下が可能だ。
  • だれがその「行」をいつ作成したか、さらに最終更新者はだれでいつかがわかる
  • 簡単な集計やグループ化、並べ替えであれば SharePoint だけで可能である
  • 入力や更新・修正はあくまで「行単位」であり、ブック全体をロックする必要がなくなる
  • SharePoint リストのバージョン管理機能を使えば、バックアップを数世代とることができる
そして何より入力されたデータは SharePoint リストとして SharePoint に存在し、リストに対してアクセス権を持っている Excel ユーザーであれば複数人同時に SharePoint リストを元データとして自分の Excel でデータの処理ができるようになる。
ただ、何度も書くか、SharePoint リストに対して過大な期待は禁物だ。
Excel で現状やれていることは SharePoint リストでも可能なことが多いが、そこから「もっと便利に」と期待して作りこむと難易度が急に高くなる場合が多い。
最初は、Excel で行われている「入力」の部分を SharePoint リストにまかせる、と割り切って付き合い始めるのが良いだろう。

そうやって、SharePoint リストより収集されたデータを「テーブル」という形で Excel にエクスポートすれば、「計算」のフェーズである。四則演算だけではなく、文字列操作や、フラグによる論理演算なども「計算」だ。この計算は「出力」のための下準備である。ワークシート関数を使う、VBA を使う、Pivot テーブルを使うなどなど、様々な方法が考えられる。

そして最後は「出力」だ。

この出力のフェーズでは「エクセル方眼紙のテクニック」を存分に使ってよい。なるべく参照のみの数式にしたいところだが、どうしても論理演算からそのセル(または結合セル)を「空白」にするなど一部の関数・数式による処理も入るだろう。重要なのは出力では「見た目のための処理」に留めるべきであり、データそのものの加工や計算は印刷のための出力シートでは可能な限り避けることでメンテナンス性の高いワークシートになる。

実践ワークシート協会でも、VBA セミナーの受付はメールでいただき、そのデータを SharePoint リストに複数人で登録している。(もちろんメールボックスは共有メールボックスを使い、複数の人がメールを確認できるようにしている)アイテムを登録する時点で各開催日の申込み人数や、登録した受講者への受付、お断りといったステータスを管理している。受講者によっては「請求書」や「領収書」を希望する場合があり、その時は、SharePoint リストにデータ接続された Excel から氏名や宛先、受講コースや金額といったデータを抜出し、エクセル方眼紙テクニックで作成された「請求書ワークシート」や「領収書ワークシート」からデータを参照し、印刷している。

今後は Excel だけではない「入力・計算・出力」の考え方

前回紹介した Excel Services などはまさに「入力・計算・出力」の「出力」の部分で活用される機能だ。
このように、実践ワークシート協会の田中が提唱している「入力・計算・出力」も、Excel だけの要素で考える時代が終わりつつあると感じている。(まだ、Excel の世界だけでも浸透していない考え方であり、今後も実践ワークシート協会はこの考え方を Excel ユーザーに啓蒙していかなければならないが。)

Excel + Office 365 で「入力・計算・出力」の考え方を使って、今利用しているブックを見直し、適切な機能をそれぞれのフェーズで使うことが今後ますます求められることになるだろう。そして、それを適切に見極め、利用できるユーザーが本当の意味で Office 365 のメリットを享受することができるのではないだろうか。

その可能性を一番持っているのは Excel を使いこなしているユーザーであると考える。

2014/12/09

Excel ユーザーのための Excel Services - Office 365

Excel ユーザーが Excel Services を全く知らない、というケースは往々にしてある。もちろん、Office 365 の E3 や、SharePoint Online の Plan 2、オンプレミスの SharePoint Server それも Enterprise 版でなければ使えないのだが、Excel を日々業務で使っているユーザーにとっては、Excel Services で何ができるかを知っておいて損はない。

Excel Services で何ができるのか

データ集計を Excel で行い、グラフと表を駆使してレポート用のワークシートを作るケースは多いと思う。その作成したワークシートを印刷して、上司なり管理担当者に渡したときに「これを社員全員で共有したい」と言われることも多いのではないだろうか。

ブックをメールに添付して関係者に一斉送信する、共有ファイルサーバーに保存してその場所を伝えると、「Web のページに貼り付けてみられるようにしてほしい」と言われる。そこでグラフを画像にして Web ページに <img src> タグを使って張りつける。

月に1度の月次集計の結果であればまだしも、週次、日次となるとその手間はかかる。そこでデータ集計結果をデータベースから C# を使って、Javaを使ってとりだし、JavaScript でグラフ表示ライブラリーを使って Web 開発をして、、、

「経営状況を可視化するダッシュボードを作成し、KPI を管理しましょう」

ここにいくらの投資をしているのか。また、しなければならないのか。

すでに Excel でグラフと表でレポート(=ダッシュボード)を作っているのであれば、それを公開したほうが早いと思うであろう。

Excel Services はブックそのもの(タブでワークシート選択可能)、名前(named range)で指定した範囲だけを SharePoint のページに表示させる機能である。

ブックを表示(タブでワークシートの切り替え可能)

グラフのみ表示

名前で範囲指定を表示

表示させるだけでなく、操作も可能

実務で使う分析シートは、部門別、製品別、担当者別などなど、データの切り口を変えてみたくなる場合が多い。この時、Excel ではピボットテーブルを使い対応することがもっとも効率的だ。
Excel Services は単にワークシートを表示させるのではない。Excel Online のように、SharePoint のページの中の Excel を操作させることも可能だ。(この Web パーツの実態は Excel Online のビューのようなものである)

これによりピボットテーブルを Excel Services で SharePoint ページに表示し、各種切り口で分析結果を変えて確認することが可能だ。

また、Excel 2010 で追加されたスライサーなど新しい機能も活用できる。操作性を考えれば、今までのフィールドリストでの選択や、ドラッグアンドドロップに比べて、ボタンを押すだけで切り口を変えるスライサーのほうが圧倒的に使いやすい。



表示方法を指定・保存した Excel ブックを SharePoint の Web パーツとして貼り付ける

使い方はいたってシンプルである。
通常の利用との違いは、表示させたい範囲や、グラフ、ピボットテーブル、テーブルがあれば、Excel ブックを保存するときに「ブラウザーの表示オプション」を設定し、SharePoint のドキュメント ライブラリーに保存するだけだ。


もちろん、このオプションはブラウザー表示(=Excel Online と Excel Services)でのみ有効で、ローカルPCの Excel で開けばすべてのワークシートを参照することが可能だ。

全員分の E3, Plan 2 ライセンスは要らない

とはいえ、この Excel Services を使うには E3/SharePoint Online Plan2 以上が必要だ。Office 365 E1 と E3 の一人当たりの月額ライセンス料はかなり違う。しかし、E3 が必要なのは Excel Services を使って SharePoint のページを設定するユーザーのみであり、参照するだけのユーザーは E3 である必要はない。

実務上 E3 までを有するべき人は現場の担当、責任者だけで、皮肉的だが参照するだけの経営層はそれほどの高機能のサービス/ライセンスを与える必要はない。もちろん、参照だけしかしない一般ユーザーも E3 を付与する必要はないのだ。

それでも落とし穴がある

Excel ユーザーにとっては、自分が作成したブックの出力結果を会社・組織全員と共有できる夢のサービスのように感じられると思うが、いつものように落とし穴が存在する。
  • VBAは動かない
  • シェイプやオブジェクト、SmartArt は表示されない
  • セルのコメントは表示されない
  • 外部ブック参照数式は再計算されない
また、最初の画像でわかるように凡例が文字化けしている。このような細かい調整はこれからだろう。


そして、大きな落とし穴が SharePoint リスト - Excel 連携で存在する。それは以下だ。
  • クエリ テーブル(外部データ範囲)は Excel Services から更新されない
があげられる。これはこのブログで紹介している SharePoint リストを Excel エクスポートしデータ接続(iqyファイル)から作成したテーブルも含まれる。

http://road2cloudoffice.blogspot.jp/2014/11/office-365-sharepoint.html

よって、SharePoint のページで共有できる状態は、ローカルPCの Excel でデータ更新をした時点のものに限られる。

できれば、Excel Services 上で更新、または、自動更新の機能を使って、最新情報をみたい、と思うだろう。

実は、SharePoint リストと Excel を連携させる方法は iqy ファイルを使ったデータ接続以外にもある。そして、Excel Services をさらに使いやすくする、上記の更新情報を提供する機能がある。それは PowerQuery と Power BI for Office 365 (有料別サブスクリプション)である。
これについては別の機会に紹介したい。

[参考]
Excel Online, Excel Services, Excel Web App の比較
http://office.microsoft.com/ja-jp/excel-help/HA102832426.aspx

Excel Services を使用して共同作業を行う
http://office.microsoft.com/ja-jp/excel-help/HA010108088.aspx

Excel と Excel Services のビジネスインテリジェンス
http://office.microsoft.com/ja-jp/excel-help/HA102915300.aspx

Excel Services で外部データを操作する
http://office.microsoft.com/ja-jp/excel-help/HA102830785.aspx

2014/12/05

Excel ユーザーのための SharePoint リスト 「集計値」列

Excel ユーザーであれば、SharePoint リストを活用できるという話だが、リストの Excel へのエクスポート機能もさることならが、SharePoint そのものの「Excel 的な要素」を実感するのが「集計値」の列である。


列の情報の種類で「集計値」を選択すると、その列に「数式」を入れることが可能になる。また、リストで定義されている列を数式で使うことができる。まさに Excel の数式に近い。

そして、この数式で利用できる「関数」も用意されている。

Excel でもそうだが、単純な四則演算の他で入力されたデータを行単位で処理するパターンとしては、
  • 文字列操作
  • 日付の操作・計算
が主だろう。
もちろん、Excel にエクスポートしてしまえば、Excel だけで処理可能であるが、SharePoint リストのビューのグループ化などをする場合に、グループ化の列を入力されたデータから加工して作るケースも考えられる。

Excel ユーザーであれば「ニヤリ」とする場面も多々あることから、SharePoint リストでの数式、関数を覚えておいて損はない。

しかし、いつものように「落とし穴」もあるので注意してほしい。それらも含めて紹介する。

文字列の結合

"姓"と"名"を別々に入力させて氏名にするなどは "&" を使う。姓名の間に半角スペースを入れることも可能だ。アイテム入力にはこの集計値の列は表示されない。リスト表示の際は「氏名」だけを表示するビューを作成すればよい。CONCATENATE 関数も使える。


文字列のチェック/抜出し/置き換え

文字列操作では Excel でおなじみの LEFT、RIGHT、MID 関数、FIND、SEARCH 関数、REPLACE、TRIM、CLEAN 関数が使える。私が試した範囲だと全角を半角にする ASC 関数は動いていないようだ。半角を全角にする JIS 関数はない。(構文エラーになる)
TEXT 関数と VALUE 関数もある。特に TEXT 関数は日付の表示形式でも使う。
UPPER, LOWER, EXACT 関数もある。

もちろん、関数を組み合わせて使うことも可能だ。入力されたコードの "-" より前半部分を抜きだす数式は以下になる。

=LEFT(コード1,FIND("-",コード1)-1)



ただ、数式入力ボックスは狭く、数式オートコンプリートによる入力支援機能はない。よって、引数についてはワークシート関数と同じだと思って入力するか、SharePoint リストで利用できる関数のヘルプをみて入力する必要がある。

日付はシリアル値で保存されている

Excel ユーザーにとっては「!?」という事実なのだが、SharePoint リストで日付をシリアル値で扱っていることは Excel ユーザーにとっては大きなメリットだ。つまり、シリアル値が使えることで、若干 Excel の数式/関数とは違うがほぼ Excel と同様のことができる。

年、月、日、曜日を表示する

YEAR関数、MONTH関数、DAY関数を使えば、年、月、日を抜き出すことができる。ただ、これらの関数を使うと、「返されるデータの種類」を「一行テキスト」していても数値になる。(2014なら 2,014 といったように) 
ここで TEXT 関数を使えば =TEXT([日付データ], "YYYY") で文字列として年を取り出すことができる。 Excel 同様に1月を 01 と取り出したいのであれば、=TEXT([日付データ], "MM") となる。
残念ながら "g" や "ge" で元号はとれない。
曜日は若干数式が違うので注意してほしい。
Excel であれば、=TEXT([日付データ],"aaa") で「水」になり、=TEXT([日付データ],"aaaa")で「水曜日」になる。 "ddd" で「Web」になり、"dddd" で「Wednesday」となるが、SharePoint の場合は以下になる。

=TEXT([日付データ], "ddd")   「水」
=TEXT([日付データ], "dddd") 「水曜日」

"aaa" はなく、逆に Fri や Friday と表示させたい場合は、関数で工夫するしかない。

期間/時間の計算

シリアル値を使っているので、日数計算は単純な加減計算となる。
シリアル値で計算後の時間の表記については TEXT 関数を使う。特に TEXT 関数の  "[h]:mm" で24時間を超える数値の表記が SharePoint リストの数式でも指定可能だ。

[追記]
Excel でもそうなのだが、1日はシリアル値「1」なので、1をプラスすればよいが、時間になった場合は、12時間だから 0.5 と考えてはいけない。もし、11分だったら 11/60/24 で 0.0076333333.... と循環小数になる。安易に小数点による計算を勧める記事が多すぎるのは Excel のシリアル値操作での失敗例もしくは正しい使い方をご存じないからだろう。

時間の計算はシリアル値を直接操作せずに、文字列 "h:mm:ss" を加算するだけでよい。
たとえば、開始時間をリスト アイテムとして入力させて、集計値の列で予定終了時間を 4 時間後にする場合、入力する式は以下になる。

=TEXT(開始時間+"4:00:00","YYYY/MM/DD h:mm")

TEXT関数を使わなければ、集計値の列ではシリアル値が表示されてしまうため表示形式を関数で指定している。
もちろん、シリアル値として計算するので、60分を超えれば1時間繰り上がる、24時間を超えれば1日繰り上がる。(減算もしかり)

注意点は "h:mm:ss" は時刻表記であることだ。 h は 23 を超えることをはできない、mm や ss は 60 を超えることができない、という点だ。 70分を追加したいのであれば、 "1:10:00" である。26時間を指定したいのであれば、まずシリアル値に 1 を足した後で "2:00:00" を加算してほしい。


その他(日付関連)

シリアル値を使っているので、月末の日は翌月の1日から1を引けばわかる。その時、翌月の1日を作成するには DATE 関数を使って文字列の年月日表記をシリアル値してから1を引く。

=DATE("2014","3","1")-1

上記を応用すれば、うるう年の判定も可能だ。上記式の日付が "29" だったらうるう年である。

[注意] 四則演算結果の集計値の列を SharePoint リストで集計できない

これはできると思ってしまう「落とし穴」だが、たとえば、[数量] * [単価] で金額を計算する集計値の列を作り、SharePoint リストの「集計」を使ってその合計を出そうとしたくなるだろう。
しかし、残念ながらこの集計はできない。

あまり凝ったことは SharePoint リストでやらないほうがいい

ここまで紹介して、最後の結論がこれだとがっかりくるだろう。上述した計算結果を集計できない、また、[h]:mm の時間も集計できない。[h]:mm はTEXT関数で文字列になっているからである。Excel のセルの表示形式はセルの実体は変えずに見た目だけを変更しているが、SharePoint リストの列には表示形式という機能はない。なにより、入力するエリアの横幅がせまく、数式オートコンプリートも効かないため、長い数式は鬼門である。
あくまで、入力するユーザーにとって、または、リスト表示上最低限必要なものに限って数式を使ってデータの表現方法を変えるにとどめ、複雑な計算式は Excel にエクスポートしてからおこなったほうが無難だと言える。ここでも Excel のワークシート作成テクニックである「入力」-「計算」-「出力」の考え方は活きてくる。

注意してほしいのは、データ接続によって Excel 側に出された Excel の計算結果は元の SharePoint リストに標準の機能として反映されないという点だ。

それでも、Excel の計算結果を SharePoint のページ上でみたい、(つまり、「出力」)となれば、Excel Services である。次回は Excel Services を紹介したい。

[参考]
Office デベロッパー センター 「集計フィールドの数式」
http://msdn.microsoft.com/ja-jp/library/office/bb862071%28v=office.14%29.aspx

Office Online 「データ計算の説明」
http://office.microsoft.com/ja-jp/windows-sharepoint-services-help/HA010379914.aspx?CTT=1

Office Online 「列のタイプおよびオプション」
http://office.microsoft.com/ja-jp/office365-sharepoint-online-enterprise-help/HA010302193.aspx

2014/12/02

Excel ユーザーのための SharePoint リスト 「参照」列

SharePoint リストと Excel の親和性については前回紹介した。

Excel ユーザーのための Office 365 SharePoint Online
http://road2cloudoffice.blogspot.jp/2014/11/excel-office-365-sharepoint-online.html

この中で「あまり凝ったことをやらないほうがよい」と述べたが、その意味は、意外なところで「落とし穴」があったり、便利だと思って使ってしまうと業務上問題がでることに気づくのが遅かったりする可能性があるためだ。

システム開発のような要件定義、設計、テストといったフェーズを踏めば、そして、そのために SharePoint の良質なトレーニングを事前受けていれば、そのような問題や落とし穴を回避できるだろうが、エンドユーザー側が主となって活用するとなると、システム開発経験やデータベースの知識が十分あるとは言えない。

そこで、SharePoint リストの活用でありがちな落とし穴やはまりポイントを紹介する。もちろん、Excel との連携を考えた上での「ポイント」である。

入力規則的な使い方で「参照」に注意

Excel の入力規則で「リスト」を指定してドロップダウン リストから選択させる機能がある。
同様の機能として SharePoint リストの列設定で「選択肢」と「参照」がある。

選択肢は Excel の入力規則で選択されるアイテムを直接ダイアログの「元の値」に入力する方法と同じだ。



エンドユーザーの使い勝手、入力効率を考えれば、なるべく選択可能なものはドロップダウン リストから選択させたい。また、選択することで誤入力を抑えることができる。

この「選択肢」の列は、SharePoint から Excel にエクスポートすると、選択したものが「文字列」として処理され、Excel で利用可能になる。

一方、SharePoint リストの列の「参照」は Excel の入力規則でいうところの「元のデータ」が範囲やテーブルになったものと考えるといいだろう。参照先を変更すれば、ドロップダウン リストの内容も変更される。(最新のものになる、と理解しているだろう)


入力規則でテーブルを使う方法は以前紹介しているのでそちらも参照いただきたい。

http://road2cloudoffice.blogspot.jp/2014/10/blog-post.html

この方法は、元のデータの追加にもドロップダウン リストが対応できる点がテーブルを使うメリットだが、もし、「青」を「青色」と変更した場合、どうなるか。以下のアニメーション GIF を見ていただきたい。


ドロップダウン リストは参照先のデータの追加(黄)に対応し、修正(青→青色)にも対応した。
この動きを SharePoint リストの「参照」に期待すると業務上大きな問題がでる場合がある。

ワークシート上で最初にドロップダウン リストで選択した「青」は青のままだったことを覚えていてほしい。(A1セル)

SharePoint リストで参照先となる色のリストを作る。

他のリストの列で、この色のリストを参照する「列」を作成する。


そうするとリスト アイテム入力時に以下のように選択が可能になる。


Excel で行ったように黄を追加すると、ドロップダウン リストにも黄が追加される。


では、参照先リストの色のリストにある青を青色する。すると、参照している列に青色が追加されるが、その前に入力していた1行目の青も青色に変わっていることがわかるだろう。

この動きが Excel の入力規則 リスト 参照先テーブルとの違いである。
Excel の入力規則のリストのドロップダウン リストからの選択は、ドロップダウン リストは参照先から作成されるが、選択した場合、セルに入るのは「文字列」である。

一方、SharePoint リストの参照は、ドロップダウン リストは参照先のリストにより更新され、選択して入力されるのは文字列ではなく参照先のリストのアイテム「ID」なのだ。

そのため、参照先のデータが変われば、リスト上のデータも変更される。動きとしてはリレーショナルデータベースにおけるリレーションと同じである。

もちろん、過去にさかのぼってデータが一斉変更されたほうが良い場合もある。

しかし、過去のデータや一度入力したデータを変更したくないケースも業務上あり、その場合、安易に参照を使ってはならないのがわかるだろう。

参照先データが可変する場合は参照による追随は非常にありがたいのだが、もしアイテムそのものの変更が発生する可能性がある場合で一度入力したデータを変更したくない場合は、参照ではなく「選択肢」を使うべきだ。もちろん、選択肢はデータの増減に追随できないため、変更が発生したら、それを列設定で反映させなければならない。

Excel のワークシートと SharePoint のリストは親和性が高く、連携すると様々なことができるのは事実だが、このような違いがあり、そこに気が付くのに時間がかかることも多い。

この参照する列を含むリストを Excel にエクスポートすると以下のようになる。


参照列は文字列としてエクスポートされていることがわかるだろう。

上記の話はデータベース設計の経験があればすぐに気が付くと思うが、Excel でこなしている業務を SharePoint リストで補完し合うといった場合ではなかなか最初からは気が付かない。
参考になれば幸いである。

2014/11/28

Excel ユーザーのための Office 365 SharePoint Online

Office 365 というサービスは今後のマイクロソフト社の主流のサービスと位置付けられていると考えてよい。多くの製品開発はまず Office 365 というクラウドサービスを対象に行われ、その後、オンプレミスと呼ばれるサーバー製品にフィードバックされることが、マイクロソフトの開発責任者によって明らかにされている。

Office にしても、Office Premium や Office 365 Solo といった商品・サービスが登場し、クラウドや Office 365 の存在を無視し続けることがデメリットになりつつある。まして、企業で Office を利用しているユーザーであればあるほど、Office 365 の恩恵を受ける可能性が高いのだ。

その Office 365 の中でとりわけ利用・活用に頭を悩ませているのが SharePoint Online であるというユーザーも少なくない。SharePoint Online は「なんでもできる共通基盤」として紹介されてしまうため、逆に何をやっていいかのイメージがつきづらいサービスである。


実際、コラボレーションというキーワードから「社内ポータルサイト」および「共有文書管理のファイルサーバー」として使うユーザーもいれば、Notes からの移行でワークフローの機能を使い、社内のプロセスをワークフローでまわそうとする企業もある。

そこに独自の開発を入れる、もしくは開発を入れないと要件が満たされないということから、開発を依頼する会社も多い。


しかし、反面、SharePoint は Excel ユーザーにとっては「長年の課題」をお手軽に解決する可能性があるサービスであることはあまり語られない。

Excel ユーザーが長年課題として持っているもの、それは情報の収集・集約方法である。

複数のユーザーに対して Excel ブックで入力シートを作成し、それを配布、記入後にメール添付で返信、というような使い方をしているユーザーは多いだろう。そして、それら返信されたブックを開き、集約する作業、コピーする作業などを手作業でやるか、VBA でマクロ機能を使うか、といったものである。

そこで、SharePoint の「リスト」である。
SharePoint の「リスト」という機能は Excel との親和性が非常に高い。

以前に Excel のブックをそのまま SharePoint リストにする方法を紹介した。
http://road2cloudoffice.blogspot.jp/2014/11/office-365-sharepoint.html

実際、このようにすんなりいくことは稀であり、SharePoint リストの構造、リストでやれることやれないことを理解することで、この Excel エクスポートを使いこなすことも可能になる。

そこでおさえておきたい SharePoint リストの機能を紹介したい。ただ、この活用のポイントは SharePoint 側で「あまり凝ったことをやりすぎない」であることは最初に述べておく。そのかわり我々には Excel があるのだから、Excel でその補填をすることを考えると幸せになれるかもしれないということだ。

SharePoint のリストはワーシートみたいなもの

以下を見てほしい。これは SharePoint のリストをデータシートビューでみたものである。


このように1行が1件分のデータとして表示されているのを見るとワークシートの表に近いことがわかると思う。すでに紹介しているが、SharePoint リストは Excel へのデータ エクスポートが容易であることから、もし、データ入力が SharePoint 側で行われれば、その後の集計や分析は Excel のみで実施することができるのである。

SharePoint リストの1件分のデータを構成する「列」はどのようなものからなるか。始めから Excel にエクスポートすることを念頭において構成することで、その後の作業効率が大きく変わることは言うまでもない。

列作成で選択可能な種類

・ 1行テキスト
Excel にエクスポートすれば「文字列」になる。

・ 複数行テキスト
Excel にエクスポートすれば「標準」になり、データ(アイテム)のどれかに改行が入ったものがあれば「折り返して全体を表示する」のチェックがついた状態になる。いずれも文字列扱い。

・ 選択肢(メニューから選択)
Excel では文字列になる。選択肢は列の設定で候補を入力して、そこから選択した文字列が入る。

・ 数値(1, 1.0, 100)
Excel にエクスポートすると「通貨」分類の記号「なし」に設定される。パーセンテージの設定の場合は、「50.5%」とリスト表示され、Excel 側では表示形式「パーセンテージ」の 50.5% となる。

・ 通貨
あまり使わないが、リスト側で「\2,000」と表示され、Excel では表示形式「会計」の記号「\日本語」になる。

・ 日付と時刻
SharePoint リストのアイテム入力ではカレンダーコントロールを使うことができる。また、直接文字の入力も可能である。Excel にエクスポートすると、日付として認識されシリアル値としてエクスポートされる。

・ 参照
SharePoint リストの列の参照は、他のリストのデータを参照して、そこからドロップダウンなどで選択できる。Excel 側では文字列として設定される。

・ はい/いいえ(チェックボックス)
SharePoint リストでの入力画面はチェックボックスのオン/オフだが、入力後の表示は「はい、いいえ」になる。Excel にエクスポートすると「TRUE/FALSE」となり、標準セル扱い。


おおよそ上述の種類から選択することになるだろう。
うれしいことは日付のデータを「シリアル値」として Excel 側にエクスポートしてくれる点。( Excel が日付と判断してシリアル値にしていると思ったが、SharePoint リストの集計フィールドの数式でシリアル値を扱うことができるのでシリアル値をエクスポートしているかもしれない。) 他についても表示形式を設定して文字は文字、数値は数値として Excel 側で認識することが可能である。

ちなみに、文字列(1行テキスト)として定義した列の「001」は当然文字列の「001」としてエクスポートされ、「1-1」が「1月1日」になることはない。

なお、これらの列定義をしてリストを作成すると、入力画面は以下のようなものになる。
カレンダーコントロールや、ドロップダウンリスト、チェックボックスでシンプルな入力支援が可能だ。
必須入力の設定やちょっとした入力規則のような設定、IMEのオン/オフの設定も可能なので、ユーザーが入力しやすい、誤入力を避ける設定を検討すると良いだろう。


ビューやオートフィルターを使って「表形式で編集」する

SharePoint リストの画面では、特に設定をしなくても Excel と同じように「オートフィルター」による絞り込みが可能である。オートフィルターをうまく使って「リスト編集」によるデータシートビューでデータを確認、変更するのは Excel を使ってデータを操作する感覚に似ている。

ここで、入力されたデータの整合性のチェックなど、あるロジックを追加したい場合、手作業・目視で1件1件調べるか、SharePoint のアプリケーション開発となるが、このリストデータをそっくり Excel 側にエクスポートすれば、Excel ユーザーはワークシート関数やピボットテーブル、または VBA を使ってチェックが可能である。 Excel を使いこなしていれば、ここに開発のコストをかけることなく、整合性チェック程度は可能になるのだ。

もちろん、レコード件数を意識することになるが、数千件程度であれば現在の Excel と PC 能力をもってすればそれほど時間のかかる重い処理にはならない。

SharePoint リストはテーブル形式でエクスポートされる

SharePoint リストのデータはテーブル形式で Excel 側にエクスポートされるので、行数が変わっても構造化参照やピボットテーブルから参照していれば、「データ更新」するだけで最新のデータを参照・利用することが可能である。

テーブルのすすめ 構造化参照
http://road2cloudoffice.blogspot.jp/2014/11/blog-post.html

おおよそ、このようにテーブル形式でエクスポートされたデータを Excel で扱うのはピボットテーブルが使いやすい。このエクスポートされたテーブルは iqy ファイルを使ってデータ接続し、ワークシート上のテーブルのデータを更新するタイプで、前回まで紹介した「データ モデル」を使っていない。よって、データ モデルで話題となった集計フィールドや集計アイテムはこのテーブルを参照したピボットテーブルで使える。

なお、このようなデータ接続は SharePoint から Excel への一方通行のデータ接続である。Excel 側でテーブルを修正しても、その修正結果は SharePoint には反映されない。あくまで参照用であることを心に留めてほしい。

よって、Excel 側で整合性のチェックをし、その情報を元に SharePoint のリストのデータを修正、さらにデータ更新をかけて、整合性のチェックを行うことを繰り返すことになる。

また、そのチェック用の Excel ブックは SharePoint に保管して、他のユーザーと共有にしてもよい。他のユーザーもリストがあるサイトにアクセスが可能であればブックの接続プロパティにあるプロバイダとコマンド文字列の情報から、PCにある Excel でブックを開いてデータソースの更新が可能になる。

問題は Excel Services と Excel Online

上記の方法の問題点は Excel Services と Excel Online で iqy ファイルを使ったデータ接続の更新ができないことである。

ただし、SharePoint リストと Excel のデータ接続は iqy ファイルを使った接続だけではない。
このあたりの情報が整理つき次第紹介したいと思う。

[追記] OData データ フィード接続による Excel Online データ接続更新可能の記事が以下になります。
http://road2cloudoffice.blogspot.jp/2015/01/excel-online-excel-web-access-excel.html
[追記終わり]

ポータルだ、サイトだ、と考えずに

全社/部門ポータルを作る、などのアプローチから SharePoint に触れるケースも多いだろうが、現状 Excel でやっているこまごまとした業務を「入力」「計算」「出力」のロールやフェーズにわけて、入力の部分を SharePoint リストで行い、計算や出力の部分を Excel で行ってみてはいかがだろう。

SharePoint リストの場合はリスト アイテム単位のアクセス権の設定はリストの詳細設定から可能だが、込み入ったデータの扱いではリスト側で一工夫必要になる。それでも、単純な集計や申込み・申請業務などは SharePoint リストと Excel データ接続による Excel の処理を検討してみる価値はあるだろう。


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自己紹介


PowerBI コミュニティ勉強会の 沼口 です。
https://powerbi.connpass.com/
最近の Excel は Office 365 のクラウドサービスと 連携する方向性が打ち出されています。この「Road to Cloud Office」ブログでは、Excel ユーザーの視点から Power BI Service や、Office 365 の活用方法を模索した結果をお伝えしています。
Microsoft MVP for Data Platform 2017-2018